DMM.comの人事制度で見る 「本当の事業貢献につながる人事」とは-後編-

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合同会社DMM.com組織管理本部 人事部 部長の林氏をお迎えし、50を超える事業を展開する同社の人事の役割、その中でも特に組織のパフォーマンス向上に向けた取り組みについてお話しいただきました。今回は後編として、より具体的なDMM.comの人事制度設計や運用についてまとめたものをお送りします。

前編はこちら
DMM.comの人事制度で見る 「本当の事業貢献につながる人事」とは-前編-

林英治郎氏

合同会社DMM.com
組織管理本部
人事部 部長

2008年、株式会社トライアンフにて複数業界の新卒 / 中途採用活動の企画~運用リードを経験。2012年、ソフトバンク株式会社にて採用、人事部担当人事、グループ会社の人事戦略設計に従事。2017年、DMM.com社長室にて人事制度設計、のちに人事部部長に就任し、人・組織で事業に貢献するための人事戦略の企画、実行全般をカバー。また、自社業務以外の活動で一般社団法人MATCH-UP!!を立ち上げ、人事領域の知見交換促進に携わる。個人として人事制度設計や人事領域アドバイザリーに取り組む。

DMM.comの人事制度設計について

人事制度設計について「50以上の事業、20以上のグループ会社を束ねるためにどのように設計して、運用しているんですか?」という質問をよくいただきます。そういったご質問をいただいた際は、「束ねようとしていません」と回答しています。弊社では、例えば農業やサッカークラブ運営、救急車や消防車の製造など、まったく異なる領域の事業を行っています。それらがさまざまであっても、人事制度設計においても何かしらの共通項を持って束ねていくことは一見合理的に見えますが、それが事業の勝ち筋の強化につながるかというと必ずしもそうではないと思っています。

もちろん、一定のフレームを提供し、それを使ってもらいながら事業に集中してもらった方が事業の立ち上がりが早いのでそれはやっていますが、提供するのはフレームであって中身は個別にカスタマイズできるようにして、事業ごとのゴール実現を追求できるようにしています。制度設計においても事業の「勝ち筋を強化する」ということの表れかもしれません。

具体的な人事制度に関しては、役割等級をベースにしたシンプルな人事制度を用意していて、評価制度を運用する負荷を極力減らすためにブラッシュアップし続けています。

共通化しているのは役割等級、等級の定義、尺度、そして評価記号のみです。それ以外は部署ごとにカスタマイズできるようにしています。どのような課題解決ができる人物がどんな評価を受けていて、どの部署にどのくらいの期間在籍しているか、ということが把握できれば、結果的な全体把握は可能なのでそれでいいと考えています。

評価軸は目標達成と行動評価の2軸です。目標達成の評価軸の中身は、スキル評価と成果評価の2つの要素があり、事業責任者の判断で個別メンバーに対して、どのようなウエイト設定をしてもいいことにしています。スキルがまだまだ足りない人は、何か成果に貢献しようとしても、そもそものスキルが足りないということが起こり得るので、スキル向上そのものを評価対象とすることもOKですと。ここは上司・部下で調整ができるようにしています。行動評価軸の中身も、各部署によってカスタマイズ可能にしていて、事業責任者が事業成長のために、どのような行動をメンバーに浸透させていきたいかという想いを反映できるような余地を持たせています。あとは1on1で、日々のフィードバックを通じて、期待値調整することを促しながら運用しており、評価制度としてはかなりシンプルだと思います。

DMM.comが目指す人事制度運用のあり方

最終的には、Win-session(目標管理において、週次で進捗を報告し、賞賛するセッション)を軸にした、なるべくアジャイルなフィードバックの蓄積による目標管理、評価にしていくことを目指しています。目標管理については各社でいろいろなやり方があると思いますが、悩ましいケースを思いつくだけ書き出しました。

上段の目標とのつながりが感じられない、期初に立ててから半年・1年後に振り返るので変化の早い組織では状況が変わってしまっている、目標設定そのものが稚拙、モニタリングできる指標や状態がない、目標に自分ではコントロールできない変数が含まれているといったものがあげられます。

こういったケースに万全に備えるべくガチガチに固めていくよりも、日々の活動を継続しながら改善を進めていくことが大切です。上段の目標とのつながりを可視化すること、目標期間の途中で定期的に振り返ること、モニタリングする指標がない場合は、その障壁が何なのかを考えて、チェックできるような仕組みにしていくこと。そのためにWin-sessionという手法を取り入れています。

DMM.comの人事部では、4週間単位で期初に設定した目標の進捗を振り返ります。金曜日は「賞賛・承認」の場で、次の月曜日はこれからの4週間で何をやるのか目標を立てる時間をつくっていて、それぞれに1時間ほどとっています。会議の最初10分で全員に書いてもらい、次の10分でお互いに内容を読みこんでコメントをつけて、次の30分~40分で各自がポイントとコメント箇所について説明していく、という流れです。事前に用意してもらわないのは、負荷軽減のためです。目標管理は可視化されて継続できることが重要なので、運用負荷を下げるためその場で行うようにしています。また、最初から各自が内容を説明するところからはじめてしまうと、その場で内容を読み上げて終わりになってしまうので、全員が記入をしたらまずはお互いに読み込んでコメントをつけてその後にディスカッションをする、という形式にしています。金曜と月曜で分けているのは、それぞれの場の目的を明確にして、よかったことをシェアする日と真摯に今後の進捗に向き合う日を分ける区切りをつけたかったからです。

DMM.comの人事の基本方針は「自律的に変化に対応しつづける組織づくり」

DMM.comの基本的な人事方針は、自律的に変化に対応しつづける組織づくりです。採用や育成は基本的に部署責任者の仕事であるべきだと考えています。そのため、事業部のマネージャーと一緒に採用力・育成力を上げるという取り組みを行うことを通じて、組織づくりに関与していくべきと考えています。制度や育成など人事領域についてはプロフェッショナルだという前提で、HRBP(HRビジネスパートナー)は、特に事業貢献を志向するあり方を追求するためには、事業へ踏み込むべき領域が多いことは感じています。正直、何が正解かは試しながら探っている感覚です。

DMM.comのHRBPとして今後目指していきたいこと

重要な事業の責任者以上の人物を充実させつづけるというのが、人事部の大上段に掲げている目標です。例えば起業家のような人材を生み出しつづけるには座学ではなく実践への投入が不可欠であり、そうすると新しい事業にチャレンジする機会を会社として確保しつづけないといけない。そうすると今後はもしかしたら、本部単位で新規事業比率といった指標を設けたり、起業家が上場を目指すインセンティブのような仕組みとして社内上場という制度を検討してみるかもしれません。また、バランスを取るためには健全性指標として売上対人件費の推移を人事としてモニタリングするのが望ましいと思います。

サクセッションプラン(後継者育成計画)については、フェーズも規模も異なる多様な事業があるため全部をカバーすることは難しいですが、重要なポジションや成熟した事業に関しては次の後継者を誰にするのかを着実に考えられるような組織にしていきたいと思っています。

前述したWin-sessionも、今は人事部の中で運用しているだけですが、数年かかるでしょうが、じわじわと本当に意味ある取り組みとして形を変えながら浸透していくことを想像しているところですね。

視聴者の方へのメッセージ

このような機会をいただいていろいろと話してきましたが、まだまだ課題ばかりで私もがんばらないといけないです。もしDMM.comの考え方や取り組み方が参考になると思っていただければ、SNSなどで気軽に連絡してください。知見がどんどん集まっていくことで、幸せになる人も増えていくと思いますので、何か私が貢献できることがあれば、すべてお答えしたいと思っています。むしろ一緒に働きたい、という方はぜひDMM.comで一緒に働きましょう。

※各種データや肩書はイベント実施時点のものです

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