タレントマネジメントとは?定義や目的、導入に向けたアクションを解説

  • -
    リンクをコピー
タレントマネジメントとは?定義や目的、導入に向けたアクションを解説

最近よく聞くようになってきた言葉、「タレントマネジメント」。組織論の文脈などで興味を持っている方いれば、CMやメディアなどでたまたま耳にしたことがある、という方もいらっしゃるかもしれません。

なんとなく聞いたことがあるものの、「人事担当者が人事データを活用して何かをする」くらいまではイメージを持っている方も多い一方、「その内容についてきちんと知らない」「まだまだ自分の会社には関係ないのでは?」と思っている方も多いのではないでしょうか。

今回は、そんなタレントマネジメントについて。定義や目的といった基礎知識から、タレントマネジメントによってどのような未来が期待できるか、実際に始めるにはどのようなことから始めるべきかといった実践的な内容まで解説していきます。

タレントマネジメントとは

タレントマネジメントの定義

タレントマネジメントとは、人材の採用や育成、評価など、総合的な人事プロセスの改善をデータに基づいて行うことで、生産性向上や従業員の最適配置・組織全体の活性化などにつなげる、統合的・戦略的な人事・組織づくりのこと。取り組みやシステムデザイン全体を指しています。

わかりやすくするために、従来的な「ヒューマンリソース」の考え方と比較をしてみます。ヒューマンリソースは、どちらかというと仕事に人をあてはめる考え方です。ポストが空いたから、またはある一定の年次になったから昇進する、ある部署の人手が足りないから他の部署からの異動によって欠員補充をする、といったようにポストや仕事に対して人を配置するものであって、個人の資質や志向はあまり考慮されるものではありませんでした。経営視点でいかに効率的に人材を配置し活用するかに重点が置かれていたとも言えます。

それに対して、タレントマネジメントは仕事やポストが起点となるのではなく、可視化した従業員一人ひとりの人事データを活用して、個人のパフォーマンスを向上することで組織のパフォーマンスの最大化を目指す人材マネジメント手法です。

欧米では「リーダーの育成」「優秀人材の育成」といった文脈で使われることが多いですが、日本では「(リーダーに限らず)個人を活かしながら組織戦略を考える」といったもう少し広い意義でで使われているケースがほとんどです。

タレントマネジメントが注目されている背景

タレントマネジメントが注目されている背景としては、

  • 労働力人口の減少により、一人ひとりの生産性向上・パフォーマンス向上が必要不可欠となっていること
  • 個人のキャリア観の変化や働き方の多様化により、従業員と企業のエンゲージメント向上が今まで以上に重要になっていること

などがあげられます。

経営戦略や事業戦略と同じように、人事戦略や組織戦略を考える上でもデータの重要性が意識されるようになってきています。
経営戦略や事業戦略の領域では、データにもとづき経営課題や事業課題を特定し、目標達成に向けたシナリオを描くということが当然に行われています。ならば人事戦略や組織戦略においても同様に、データにもとづき人事課題や組織課題が議論され、企業や事業の成長を実現するためのシナリオを描くことが今後ますます求められるようになっていくのではないでしょうか。

【関連記事】人事戦略とは単なる労働力の再配置ではない、ということを経済産業省の片岸様にインタビューした記事もございます。こちらも合わせてご一読ください。
【経済産業省/片岸氏】経営と人の戦略に一貫性を。変化に強い企業のあり方-前編-

タレントマネジメントの全体像

タレントマネジメントを導入するということは、何かまったく新しいことを始めるということではありません。この章では、タレントマネジメントには具体的に人事におけるどのような業務が関係し、導入することによってどのような課題解決が期待できるのかについて見ていきましょう。

タレントマネジメントの範囲は現在の人事業務の延長線上にある

タレントマネジメントの対象範囲は個人を例にとると分かりやすいでしょう。一人の従業員の採用から入社後のオンボーディング・人事異動・半期や通期ごとの人事評価・評価に基づく報酬の決定・日々の勤怠、そして退職手続きまで。組織内における従業員のライフサイクルに合わせて取得するデータが一元化され、そのデータを活用した意思決定が行われている状態を目指すことがタレントマネジメントです。一見するとタレントマネジメントには関係のなさそうな勤怠や報酬といった業務のデータもタレントマネジメントには欠かせないものです。

これまで、人事データは採用や評価など、人事に関するイベントや業務単位の「コト」を起点に管理されていることがほとんどです。したがって、1人の従業員に対して、採用時の評価と入社後の評価のギャップがなかったか?や、モチベーションの推移と人事異動の履歴や人事評価、勤怠データに相関はないか?といった、特定の「ヒト」を起点に複数の人事データを並列に見ることで、一人の従業員を多層的に捉えられている企業があまり多くありません。タレントマネジメントを行う際は、集める人事データ自体は今までと大きく変わりませんが、「ヒト」を起点に複数の人事データを見ていくことになるという点を押さえておく必要があります。

タレントマネジメントで解決しうる課題

ここまで、タレントマネジメントの範囲は、現在の人事業務の延長線上にあるとお伝えしましたが、同じようにタレントマネジメントで解決できる課題も何か特別な課題ではなく、どこの企業でもよくみられるような組織課題です。下記は、企業が抱えるよくある課題を分類したものです。

タレントマネジメントが解決しうる課題
タレントマネジメントによって解決できる課題は、多くの組織が潜在的に抱えている課題

たとえば、「人材の把握不足」「キーマン不足」は従業員一人ひとりのスキルや経歴・保有資格が把握できていないため、自社にどのような人材がいるのかわからず、適切な人員計画が立てられておらず、適材適所に人材を配置できていないということ。

また、採用や評価が上手く行っていない場合には、や「目標の形骸化」「モチベーション低下」は人事業務の中でも組織や個人の目標設定や評価の運用に課題がある場合に見られる課題です。

このように、組織が抱える課題には、必ずその要因に関係している人事業務があり、その人事業務を通じて取集したデータを活用することで課題解決への糸口を見つけることができます。タレントマネジメントの実践事例は、後半でご紹介いたします。

タレントマネジメントのはじめ方

タレントマネジメントが何かはわかりました。でも具体的に自社で取り組むためにはまず何をすればいいのでしょうか?
という疑問にお答えするのが、この章です。タレントマネジメントのはじめ方についてご紹介します。

タレントマネジメントを行うために、やるべきことは次の3つです。

  1. データベースの準備
  2. データの収集・蓄積
  3. データの分析・特定した課題に対するアクション

最初は、データを管理するための基盤をまずは整えます。どのようなツールを使うのか。集めた情報には個人情報も含まれるため、どのようなルールで管理するかなどを決めることなども必要です。

【関連記事】人事データの管理や収集に関しては、こちらの記事もあわせてご一読ください。
人事が取り扱うデータとは?

データが集められる状態になったら、現状あるデータをクレンジングしたり、不足しているデータを新しく集めたりします。

データのクレンジングとは、情報のひも付きが間違っている部分を正したり不要な情報を削除したりといった細かい作業が発生します。しかしながら、間違ったデータからは間違った分析しか生まれません。常に正しく新しい情報が見られる状態が理想です。

加えて、不足している情報を新たに集める際には、データを集める人事とデータを提供する従業員との間に信頼関係を築けていることが大前提です。「個人情報をどのように使われるかわからない」「アンケート調査で部署内の課題をあげたら人事評価に影響しないだろうか」と従業員が不安になっている状態では、有効なデータは集まりません。「組織をよりよくするために、自分の情報を預けるのだ」と感じてもらえる関係づくりを目指しましょう。

もちろん、現場一人ひとりとの関係も大切ですが、経営層やマネージャー層から理解を得ることも大切です。組織ごとのトップが意義を理解し現場で語ってくれるかどうかは、各人のデータ提供に対する姿勢へ大きく影響を及ぼすといえます。

そしてデータを集めただけでは意味がありません。それらを分析することがデータ活用です。現状の人事課題に対して、より深堀し要因を特定する際の材料としてデータは非常に有用です。場合によっては、人事担当者だけが活用するのではなく、経営層や事業長、現場のマネージャーなど必要なときに、必要な人に限ってデータを共有できる仕組みも必要です。

【関連記事】人事データの運用体制づくりに関しては、こちらの記事もあわせてご一読ください。

人事データを活用して課題解決を行うための運用体制づくり-前編-

【立教大学/中原教授】なぜ企業は人事データを活用できないのか?-前編-

タレントマネジメントシステムとは

データベースを準備し、データの収集・管理を行うことがタレントマネジメントの第一歩であることをお伝えしました。この章では、従業員データを管理するためのシステムについて触れていきます。

従業員データの管理を、ExcelやGoogleスプレッドシートで管理している企業も多いのではないでしょうか。一方で現在は、いくつかの企業からタレントマネジメントシステムが提供されており、そのようなシステムを活用される企業が増えています。

どちらを使うのがより正しい、といったことはありません。しかし、ExcelやGoogleスプレッドシートで従業員データを管理している場合、データが増えるほどに入力や転記、修正の際に人為的なミスが発生しやすかったり、似たようなExcelデータが複数存在しどれが最新のデータなのかがわからなくなったりということも起こりえます。人為的ミスを最小限にし、業務負荷を増やすことなく従業員データを収集し管理できる、という点では、タレントマネジメントシステムの導入にも大きなメリットがあるといえます。

タレントマネジメントシステムを選ぶ際の3つのポイント

各社提供されているタレントマネジメントシステムですが、選ぶ際には次の3つのポイントがあるといえます。

  1. 従業員のデータを一元化できるか
  2. システム導入により業務は効率化できるか
  3. 可視化/活用のしやすさ

まずは、従業員のデータを一元化できるかどうかです。せっかくシステムを導入しても、一部のデータだけはExcelで別に管理しなければならないというのではあまり意味がありません。様々なデータを一元管理しやすいものを選びましょう。

また、その際に留意しておきたいのは

  • 各項目が上書きされずに更新の履歴が残ること
  • 複数項目の関連付けが容易であること
  • 他のシステムとのデータ連携ができること

こういった点もぜひ合わせて確認しておきましょう。

次に、そのシステムによって業務が効率化できるかどうかも考えます。データの入力や出力があまりにも煩雑であったり、データを閲覧する権限付与が容易でない場合は、人事担当者の負担につながることは注意しておきましょう。

最後に、集めたデータを可視化しやすいか・活用しやすいかどうかも重要です。ただデータを蓄積するのがタレントマネジメントではありません。必要に応じてグラフ等でデータを誰が見てもわかる状態に可視化できることはもちろんですが、収集したデータを活用するためには、データの項目が柔軟に追加できるか、過去データの履歴管理ができるか、常に最新で質の高いデータを取り出せるかなどといったことも確認しておくべき点だといえます。

【関連記事】失敗しない人事管理システムの選び方

ビズリーチでも、タレントマネジメントシステムを提供しておりますので、気になる方はぜひ製品サイトをご確認ください。

タレントマネジメントの実践事例

ここまでは、タレントマネジメントの概論やタレントマネジメントシステムがどのようなものであるかについてお伝えしてきました。ここからはより具体的に、実際にタレントマネジメントシステムを導入している企業・タレントマネジメントを実践している企業の事例についてご紹介していきます。

WILLER EXPRESS様

業界:運送業
事業概要:高速バス「WILLER EXPRESS」の統括管理・運行
従業員数:542名(2019年6月時点)

WILLER EXPRESSでは、全国の8つの営業所それぞれで社員情報をExcelや紙で管理しており、社内統一のデータベースがありませんでした。そのため、社員の経歴や所属が全体では不透明。社内の人材活用も進んでいませんでした

そこで、Excelや紙でバラバラに存在する情報を一元管理するため、タレントマネジメントシステムの導入を決定しました。ドライバーが所属するという事業特性から、社員の健康管理が重要な経営課題に直結。そのため、社員の健康状態も一元管理できるようカスタマイズできるかどうかを重要視して、システムを選択しています。

データを整備して活用へつなげることは、ある程度時間のかかることではありますが、データの一元化・可視化には、すぐに見られる効果もあったとのこと。実際に、WILLER EXPRESSでは社員情報がひとつのデータベースの中で閲覧可能になったことにより、他拠点の社員へ連絡をとる際相手の顔がわかる、と社内コミュニケーションの活性がわかりやすい効果として見られているといいます。

今後の目標は、それぞれの経歴や経験、スキルを踏まえて、パフォーマンスの出しやすい環境などと相関を見出すこと。人材配置はもちろん、採用の段階から自社に適した人材を採用できるでしょう。

また、組織内のポジションをHRMOSタレントマネジメントで可視化させることで、ロールモデルづくり、個人のキャリアプラン形成に役立てたいとのことでした。

詳しくはこちらをご一読ください。
人事データ活用最前線【WILLER EXPRESS株式会社】

三菱ケミカルホールディングス様

業界:製造業
事業概要:総合化学メーカー
従業員数:約42,000名

次は、三菱ケミカルホールディングスの事例です。42,000名という数の従業員のデータをどのように管理しているのか。その困難や工夫について、見ていきましょう。

三菱ケミカルではもともとは人事データをアナログに管理していましたが、2019年頃から人事データ活用への動きを本格化させました。三菱ケミカルが人事データを一元化して管理したのは、従業員数が多いことに加え、3社合併の経験や世界中へ拠点が広がっていることなどから、組織や場所を横断して人材を共通して把握する必要があったからでした。

長期的には「データドリブンな人事」を目指し、それまでの道のりを5つのフェーズにわけて、各フェーズでのやるべきことが詳細に決められています。

三菱ケミカル様における人事データ活用の事例
三菱ケミカル様における人事データ活用の事例

上記の図から、環境整備やデータ収集にはある程度の時間をかけていることがわかります。2019年の取り組み開始から、約2年かけてデータの分析ができるようになったとのこと。

従業員エンゲージメントの向上、適切な人材配置など、データ活用によって可能となることは様々ありますが、三菱ケミカルでは一度にすべてを実現できたわけではもちろんありません。できるところから、必要なところから。人事のスペシャリストとデータのスペシャリストが協力をして体制を整えてきたといいます。

とくに力を入れたものとしては、2019年にリテンション分析を、2020年にはテレワーク開始による生産性への影響調査を実施しています。ただアンケートをとるだけではなく、アンケートを分析することでリテンションに関しては定着阻害要因、テレワークに関しては生産性への影響因子など、関係を分析。要因を探り、仮設立てを行いながら、次にとるべきアクションへつなげました。

三菱ケミカル様の取り組みについて、詳しくはこちらをご一読ください。
人事データ活用に向けて知っておきたいポイント

ニトリホールディングス様

業界:小売業
事業概要:インテリア家具、生活雑貨などの製造・販売
従業員数:約4,000名

ニトリホールディングスのタレントマネジメントは、当社が独自に行なっている「配転教育」という教育方針がベースにあります。配転教育とは、従業員が数年おきに必ず異動をする仕組みのこと。「ジョブローテーション」とは異なり、専門性を高めることを目的に異動を行います。

まず重要視するのが、従業員の将来やりたいことです。漠然とした目標でもいいので、ビジョンを描いてもらい、その目標とそれまでの経歴やスキルといったデータを掛け合わせて、その人の配置やその部署で学んでほしいことを明確にしていきます。この過程においてはタレントマネジメントシステムの活用が必要不可欠とのことです。

なぜそのような取り組みをされいるのか?ニトリホールディングスの組織開発室 室長の永島氏に伺ったところ、

詳しくはこちらをご一読ください。
【ニトリホールディングス/永島氏】タレントマネジメントは一人ひとりが生み出す付加価値の最大化-前編-

まとめ

タレントマネジメントについて、基礎的な考え方から事例まで、幅広く見てきました。最後にもう一度、全体を振り返ります。

まず、タレントマネジメントとは、人材の採用や育成、評価など、総合的な人事プロセスの改善をデータに基づいて行うことで、生産性向上や従業員の最適配置・組織全体の活性化などにつなげる、統合的・戦略的な人事・組織づくりのこと。取り組みやシステムデザイン全体のことを指します。

一見難しいようにも思われますが、タレントマネジメントは人事の通常業務の延長線上にあることを忘れてはなりません。特別なことをやるのではなく、人事業務で必要なデータを連携し、総合的に多面的に個人を見ること。タレントマネジメントを行う際は、集める人事データ自体は今までと大きく変わりませんが、「ヒト」を起点に複数の人事データを見ていくことになるという点を押さえておく必要があります。

さらに、タレントマネジメントをはじめる際には、データベースの準備、データの収集・蓄積、データの可視化・活用という3ステップがあります。ただデータを集めるだけではなく、不要なデータや誤ったデータがないように常に「正しいデータ」を取り出せる状態を作ることを目指しましょう。

これらをExcelやGoogleスプレッドシートなどで行うと、人為的ミスや業務負荷も多いため、各社が提供しているタレントマネジメントシステムを活用する企業も増えています。従業員の情報が一元管理できるか、業務効率化ができるか、そして自社に合った活用・運用が行えるかどうかといった観点で選定されることをおすすめいたします。

さらに具体的なことが知りたい場合は、タレントマネジメントシステムの導入事例を見てみるのもひとつの手です。実際にシステムを導入した自社の規模の近い企業や業種の近い企業が、どのように活用しているのかは大いに参考になるかもしれません。

  • -
    リンクをコピー